松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』


この経済政策が民主主義を救う: 安倍政権に勝てる対案

この経済政策が民主主義を救う: 安倍政権に勝てる対案


ともかく読んでみました。

この人、本当は安倍の支持者じゃないのと思うくらい懇切丁寧にアベノミクスを紹介します。でも、よく読むとやっぱり批判しているのですが、立ち位置がよくつかめません。
手っ取り早くアベノミクスを批判する知識を得たい方には不向きかもしれませんが、すでにアベノミクスは破たんした中でじっくり日本経済について考える方には参考になると思います。

しかしながら、反応すべきはおそらくここではなく、むしろp112から始まる「日銀の金庫の中の国債はこの世から消えたのと同じ」という節でしょう。無からおカネを生み出す財政政策の部分でしょう。
にわかには、信じがたい錬金術のようなものですが、ここがこれからの経済を考える勘どころなので、まだ何がなんだかわからない方は読んでみられるのがいいと思います。私の言葉で説明するには困難です。

ところで本書は勉強させてもらうところも多いのですが、突っ込みどころもあって面白い本でした。
たとえば、せっかく財政法第5条(日銀が直接国債を買うこと)を破る禁じ手を使おうというのなら、直接、低賃金の介護労働者、現在話題の保育士さんに直接支援する方法を探る禁じ手を考えたらいいと思うのに、ケインジアンらしくそこは政策で介護報酬を増やすなどの間接的な政策になるのには、不満がのこります。(いまだにサプライサイドからの経済政策になっています。すでに経済のキーは消費にうつっているというのに。)

結局、経営者に利益は吸い取られて、労働者賃金にはいかないのです。(つまりトリクルダウンなんておこらないのです)

ともかく面白いほんでした。
おっと、忘れていました。

タイトルは松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』です。