ヤンキーの虎とは何か

〈ヤンキーの虎〉とは何か

ヤンキーの虎

ヤンキーの虎

それは、地方の30〜50代という、かつてヤンキーだった旺盛な事業家たちのことである。昔のリーダーシップをいかして、マイルドなヤンキーたちを束ねて、儲かる事業にはなんでも手を出していくブルジョアジーと言っていい。
そうとわかれば、心当たりがあるのではないか。昔、バイクを乗り回していたヤンキー達が、今は商売に忙しくなっている姿が見て取れる。しかしこのヤンキーの虎たちは地元から外へ出て行く気はさらさらないし、儲かること、それも誰もがよく知っている業種にしか手を出さない。つまりベンチャーではないのだ。そして地元で働くが東京への志向がなく、地元で暮らすことを望み、そして仲間を大切にする意識の強いマイルドヤンキー達なのだ。
昔の人間関係を頼って雇っているという姿なのだ。
一方ヤンキーの虎たちはよく勉強し、セミナーへの出席率もいいと言う。マイルドヤンキーには東京に顔を向けていないが虎たちは東京へよく出てくる。しかし、それは東京へ進出したいからではなく、ただ東京の流行を先取していち早く実践することに集中している。まさに機動力を持っているのだ。そこが違う。

ヤンキーの虎には2つのタイプがあって(1)名門の跡継ぎと言うタイプ。(2)成り上がりのタイプと言う。(1)はもともと商家の出であって商売感覚は生まれながらに身に付いている。また税務会計会社法、従業員の扱いのノウハウを持っているという2代目3代目である。
しかし、家業にはこだわらずどんどん新しいことをやっていくタイプなのだ。
家業にこだわりが無いのでホールディングズ会社を作ってマルチに手を出していく。
著者は地方の講演会で、よくホールディングの名前の入った名刺をよくもらうと言っている。それらは、家業をついだ二代目三代目であって、もともとの家業はあったが、現実には名刺の裏には、建設業、不動産賃貸業、介護施設運営、ガソリンスタンド経営、レストラン経営という何屋さんなのかわからない名刺だという。

(2)のタイプはヤンキーからの成り上がりであって、なかま意識が強く非常に従業員を大切にする。そしてその特徴は社員教育を図るという努力していることだと言う。
自分の周りを見渡しても、あいつがそうかもしれないという名前がいくつもあがってくる。だれでも確かに自分の周りにいるということが見当がつくイメージだろう。

具体的には奈良天理市の株式会社ファーストグループや、丸和運輸の場合などが出てくるが、そういったことよりも、これからの地方経済を担っていく存在としての方が大きいだろう。

政治的には保守で、地方議会にも入り込んでいくようだ。それは自民党かもしれないし、新興と言う意味では維新かもしれない。ただどうしても彼らが重視するのが「運」や「縁」なので、その意味ではその経営者の人格が大きく作用するだろう事は間違いないので、善とも悪ともなって現れるようだと著者は言っている。


これらヤンキーの虎の紹介は大変興味深いのだが、4章5章となって日本の経済の絵解きとなってくると全くいただけない。何がダメかと言うと「伊藤レポート」などを引用して投資を促す政策なんて言うことそのものがだめだ。これまでの金融緩和で何とかなるだろうと言う類のものだ。常にブルジョワジーの活性が経済を引っ張ると言うのも前世期的なものになっている。
すでにサプライサイドの経済は終わっているのに。

まとめ
しかし地方経済の復興と言うことに関しては興味深い内容であった。確かにこれから力をもってくる新興勢力だろうということはよくわかった。