伊井直行『青猫家族転転録』新潮社

dokusyoin2006-11-21

伊井直行『青猫家族転転録』新潮社

ちょっとしたひょんな事から読むことになった本。でもおもしろかったなぁ。主人公というのが五十歳代で十七歳の高校生とゼロ歳の娘がいると書き出しだしであれば、つかみはばっちり。それにおじさんだけど一昔前の若者小説風の文体で書くといわれれば、言う事なし。なんだか引き付けられてしまう。内容は同じような年頃の娘をもつ身としては差さしせまっており、ひたすら親はオロオロして思いつきで叱ってみたり、物分りのいい振りをしたりするしかないことが良く分かる。小説はどのように読んでもよく、書いてもいいのだということならば主人公の判断に特に異論はなく何も申し上げることはない。ただ私の趣味で言わせてもらえば、自動車についての薀蓄がところどころで出てくるのがキザなようでひっかかる。