野村総合研究所『2010年の日本 雇用社会から起業社会へ』東洋経

dokusyoin2006-04-16


書評


野村総合研究所『2010年の日本 雇用社会から起業社会へ』東洋経済新報社2005

 なぜ2010年問題なのかに答えて、歴史的なターニングポイントに立っているという認識のもと四つの件について検討を加えている。①団塊の世代の大量リタイアメント②若者の働く価値観の変化③社会資本政策の転換④情報の技術革新によりユビキタスネットワークの広がりである。わたしが関心のあるのはそのような方面からみたロングテールの問題である。ここしばらくこのロングテールにこだわり続けているのだが、それはまだロングテールの考えが良く分からないからだ。
 この本の大きなトレンドは団塊の世代の大量リタイアメントということがいずれの項目にも顔をだし、その検討に大きく紙数をさいている。その延長上でいくなら、この団塊の世代IT技術関連の問題になるのであるが、この大きな人間集団とITという機械化とはなんだかなじまないような気がするが、この世代が高度成長期の安定的な雇用社会の中核であったのに、ある日突然退職して自由人になって起業をめざすというのはにわかには信じがたい。我々からみる実感としての団塊の世代というのは、退職時にはいただくものはきっちりいただいて、あとは国内旅行や海外旅行をして蓄えが減少すれば、この利にさとい世代は株式投資デイトレーダーや、小金を稼ぐ分野に顔を出してくることは間違いがないように思っている。
 このような予想のもとでのロングテールの概念とのかかわりと言うことでこの本のなかを探してみると、「インターネット経由のアンケート」ということぐらいだろうか。ウェブを曲がりなりにも使える世代としての大量のリタイアメントはインターネットに確実に入り込んでくると考えられる。そこでのキーワードは利殖である。このアンケートを利用していわゆる市場分析をして売れ筋を探すというこれまでのマーケッティングではなく、むしろいかにロングテールを見つけ出すかにかかっていることは言うまでもない。