山田悟『糖質制限の真実』(幻冬舎)


おもしろがって糖質制限の本を読んでいる。
今回は、山田悟『糖質制限の真実』(幻冬舎
その一でも触れたように、緩やかな糖質制限食で紹介された山田悟先生の新書である。さすがに学術的な内容で、これまでの疑問に答えてくれるようでうれしい。とくにエビデンス(科学的根拠)について詳しく述べているので、なぜ糖質制限が正しいのかについてみてみよう。そしてそれはここ10年で真逆になった栄養学の常識からスタートする。悪者扱いされてきた脂質が善玉に変わったなど。

「栄養学のこの10年間の激変ぶりについて述べてきました。そうなると、皆さんが決まって心配するのは、この10年でかつて正しいと思われていたことが間違いであるとなったのであれば、今正しいといわれていることも、10年後には間違いといわれ覆る可能性があるのではないか、ということです」(p−60)

一度ある事は二度あるとまた逆転するのではないかという疑問に答えているが、それはエビデンス(科学的根拠)にはレベルがあって一番信頼のできるエビデンスで証明されているから大丈夫だと言う。
そのレベルをどう階層化しているかと言うと次のようになる。

A無作為比較試験
B観察研究
C症例対照研究
D症例報告
E専門家の意見、コンセンサス
動物実験や細胞実験のデータ

一番信頼度の高いのはもちろんレベルAであってBやCをもち出まして批判するのはおかしいと言っている。そこには思い込みや誤解を含んでいると。

少し注釈すると、Fの動物実験の結果はそのまま人間に適応することはできないと言うことであり、Eの専門家の意見と言うのも、それは主観であってエビデンスとしてはかなり低いということだ。B,C、Dは同じようだがこういう例がありましたよという報告であってやはりレベルAには勝てないと言う。このレベル上で立証された事実だけが信頼のおけるものであって、それ以外はそうそういうことも言えるし、そうでないとも言えると言う世界なのだ。
そしてこのレベルAである無作為比較試験と言うのは
「研究対象者をランダムに2つのグループに分け、一方には研究しようとしている治療を行います。そしてもう片方には異なる治療を行い、一定期間後に治療効果などを比較して、介入の効果を検証する方法です」(p−98)
ということだと言う。

こうして得た結果のみが信用に値すると言うのです。

そして得られたレベルAのエビデンス糖質制限で示された。すでにいくつもの報告が出てきている。それをいまだに糖質制限は危険なのではと言ったりする人がいるのは、このEBM(科学的根拠に基づいた医療)ということを知らない人だと結論づける。

今回の要点は以上だけれども、ひとつだけつけ加えておきたいことがある。「正しい栄養バランス」なんて存在しないと言っていることだ。すぐに正しい栄養バラスを考えましょうと言う人がいるが、万人にとって正しい栄養バランスなんていうものはないと言っている。(p−105)その人の個体の状況に合わせて検討するしかないわけで正しい栄養バランスで食事をしましょうというのは嘘だと言うのです。使いやすい言葉だけれども少なくとも医療従事者は口にすべきではないと言っている。

このことはわが意を得たりで心強い。
私も「絶対に正しい食事」と言うもはないのじゃないかと考えるようになってきたからだ。何度も、述べているように、だからと言って偏食をしてもいいと言っているわけではないのだが。

結論が出ているのは糖質を減らした方がいいよというのみだからだ。
そしてそれについてはエビデンスが出ている。
糖尿病でない人は、あまり神経質にならずに糖質制限をしたらいいというぐらいのことだ。
(ただし、子供はそんなことする必要はないともいっているので注意しよう。)