江口宏志 ほか『本屋さんの仕事』平凡社、2005

dokusyoin2006-03-19

江口宏志 ほか『本屋さんの仕事』平凡社、2005

「本屋さんの仕事」と題する連続講座を文字におこした対談と鼎談。これからの本屋はどうあるべきかが熱く語られている。すべてのレクチャーに共通しているのは、その存在意義とでもいうもので、大型書店はそれなりに、小さな書店においても、専門化すべきというような、なにを読者に提供していくかについて議論が集中している。
 そのような中でも関心をひいたのは、書店の専門化において新刊本と古本が同在してもいいという発想で、これはたしかに面白いとおもった。近代化さる以前の社会での本屋というのは、新刊本も古本もあつかっていた。江戸時代では出版もかねていたらしいので、その意味では分化する必要もなく、また分け隔てすることもなかったのである。
 インターネットにおけるネット書店ができ、欲しいと思う本は、タイトルと著者名が分かれば簡単に手に入るようになった。そうなってくるとリアル書店というのは、単に欲しい本をめあてに探しにいくだけでなく、本との出会いを求めていく空間になることはまちがいない。行ってみてなんだか楽しい書店とつまらない書店がある。それは自分と本との出会いがあるかないかということで、書店に立ちよっても出会いがなければ精神の活性化はない。
 その方向で考えれば、雑貨をあつかったりブックカフェのようにお茶を飲めるようにするのも面白いかもしれない。本の配置も「棚差し」ではなく「面だし」のレイアウトも意味のあることだろう。
 またそのほかイベント会場として使うのもひとつだし、講座や英会話教室も面白いかもしれない。本との出会いだけでなく人との出会いも演出してくれる書店になっていくことは、それだけでも工夫がひろがっていく空間になりえるだろう。
 ビジネスとしてはあまり儲かる商売ではないと一様に各氏は語っているが、ビジネスは金儲けだけではないのだから、人との出会いも大切にするという理念を捨ててほしくはない。