梅田望夫『ウェブ進化論』ちくま新書

書評
梅田望夫ウェブ進化論ちくま新書


 梅田によれば、WebはWeb2.0に進化するのだという。
 インターネット上のコンテンツの進化というよりも、アプリケーションのバージョンアップに引き付けて、Web2.0と表現して見せたのである。そしてその進化なるものを推進していくのがグーグル(Google)だという。
 5000人のエリート社員のみで構成された、時価総額10兆円を超える超優良企業だ。グーグルの何が新しいのか、何が他と違っているのかのポイントは、ヤフーがおよそ人海戦術で動いているのに対してグーグルはテクノロジーで動いているという事だろうか。ヤフーの情報収集や整理は、最終的には人の手を介しているのにくらべ、グーグルは検索エンジンというテクノロジーを使うのだといっている。それもこれまでのような簡単な検索エンジンではなく、自動収集し、自動分類し、自動選択してくれる検索エンジンのことだ。
 言語を使った検索エンジンではこの差はまだ明らかにならないが、その対象が映像になると、あきらかに差は拡大するだろうと言っている。
 なるほど、一覧性のある言語ならまだしも映像や音楽なら、検索を間違えると長い浪費の時間をつかまされる事になるし、一度ヒットしなければ、誰もが振り向かなくなるのは必定だからだ。
 このように人の介在をアナログと呼び、テクノロジーをデジタルと呼ぶなら、明らかにデジタルのデジタル化をしているように考えられるだろう。しかし、恐れることはない。人を介しているアナログといっても、処理は単純処理による脳の使い方ということであって、そんな単純な作業を行うためにだけあるのではないのだから。むしろその進化にワクワクすると感じたほうがいいのではないか。
 しかしながら、前言を屈するようになるが、この本の進化のポイントは、グーグルの話ではなくむしろ「新しい経済圏」と言っている、ウェブ内に創生されつつある経済圏のことではないだろうか。